フローリィは、志賀町から富来町に向かう風光明美な海岸沿いの小高い丘の上にあり、能登原子力発電所に隣接している。発電所において発生する温排水の一部を熱源等に利用した環境共生型の施設は、展示スペース並びに面積が約1,000 ㎡、高さ17.6メートルの温室からなっており、冬期の閉鎖期間を除き、いつも花が咲き誇っている。温室は通常よくある熱帯性や亜熱帯性の植物園ではなく、オレンジやオリーブ等の地中海沿岸地域に見られる樹々や草花が非日常的な空間の中に配置されている。デザインのコンセプトを「南欧のとある田舎町に建つ領主の館」とし、屋根には多彩模様のフランス瓦、内外壁をスタッコ調の塗材で仕上げ、館内の至る所に植え込みと噴水やせせらぎを配し、たくさんの草花による華やいだ色や香りに囲まれた開放感溢れる空間を創り出している。また、高台に位置するため建物周囲から海岸線が一望でき、2階のカフェからは温室の樹々の間を通してガラス越しに海岸線が眺められ、憩いの時を満喫できる。館内は、家具や手摺り、化粧材等に時間の経過を感じさせる仕上げを施し、照明や空調も配慮した。周景整備については、駐車場の位置を山側に配置し、調整池のビオトープ化を検討。周囲の森を再生し昆虫が生息出来るよう考慮した。さらに草花を通して地域交流を促進するため、ガーデニング、フラワーアレンジメント教室、地域のサークル活動など花のある暮らしの実践や循環型社会の啓蒙を進めこの地域の拠点になれるよう計画した。